苦く熱いコーヒーを作っている間に、温めておいたアイロンでシャツのしわを伸ばしていく。襟と裾にきちんとアイロンを掛けるのがポイントで、あとは適当でも何とかかるものだという持論をいま思いつく。午後7時2分。
惰行しながら追い越していく快速線を横目に緩行線で西へ少しだけ移動する。前に一度だけ訪れたことのある商店街を抜ける。余所の商店街を歩いていると、友人の実家にお邪魔をするような、知ってはいるのだけれど落ち着かない不安定な気持ちになり、ほのかに面白い。ちなみに、人の名前は鮮やかなほどに覚えられないが、一度でも来た場所は忘れない質なので、迷わずたどり着く。ピンズ・ログの「火の鳥にキス」を観劇。何の誇張も矮小もなく面白かった。愛すべき普通さ。普通という感想は何も語っていないが、同時に普通であることは決して悪いことではない。それは適当という言葉の二面性と似ている。各駅停車を普通と呼ぶ着想の切れ味と双璧を成す。一般的でありふれた列車の停車駅とはなんぞ。適当なことを書くのは楽しい。何にせよ、こういう芝居をコンスタントにそしてリーズナブルに観られるのはうれしい。
場所を変えて、モッカモッカの「I WANT YOU I WANT YOU」を観る。過去二作を遙かに凌ぐ出来映え。なにせ舞台も映像もちゃんと面白いのだから。やればできる。また駅前でやって欲しい。なんだかとても楽しい一日だね、これは。
ピンズ・ログ「火の鳥にキス」 (劇場MOMO)
作・演出:平林亜季子
出演:青木十三雄、石塚義高、川崎桜、古賀裕之、小島幸子、迫田圭司、高木珠里、竹原千恵、寺田未来、二木奈緒、真下かおる、森口美樹、森脇由紀
モッカモッカ「I WANT YOU I WANT YOU」 (駅前劇場)
作:モッカモッカ、上田誠、カリカ家城、小林顕作、ブルースカイ
演出:モッカモッカ
出演:加藤啓、辻修、中村まこと、中村たかし
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