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バンコク紀行 (4)

朝起きて、昨日同様チャオプラヤー川沿いのテラスで朝食。きのうよりは少し軽めに、サラダとカリカリに焼いたベーコン、ハムとチーズのオムレツ、ザーサイ粥、パンとコーヒー、あとヤクルト。うーん、どうしてもビュッフェ形式だと食べ過ぎてしまう。でもおいしいので気にしない。きょうは平日だからかきのうより空いていて、いくぶんとのんびりしている。川の流れも穏やかだ(これはきのうと変わらないはずだけど)。ところできょうは連れがスパの予約を入れているので、午前中は別行動になる(これが目当てでオリエンタルホテルにしたという疑惑もある。あとで話を聞いたり写真を見たりしたら落ち着いたとてもリラックスできそうな場所だった)。当初はホテルでお茶でも飲みながらゆっくり本でも読んでいようかと思ったのだけど、きのう通りかかった国鉄の駅が見てみたくなったので、街に出ようと思う。

10時前にホテルを出て、ニューロード地区を南北に走るチャルン・クルン通りを北に折れ、しばらく歩く。道沿いには歩道部分を覆うアーケードが続き、貴金属などのどちらかというと草臥れた感じの土産物屋がならんでいる。ガラス戸が閉じている店が多いので、なんとなく入るのに気兼ねしてしまう感じだ。歩道はあいかわらずがたがたで歩く際に注意がいる。晴れているのに歩道に水たまりが所々にできているので、はてと思って見渡すと、アーケード部分の雨樋が道路下まで繋がっておらず、樋が車道側まで伸びたところで空中で断ち切られていて、そこからぽたんぽたんとしたたり落ちる仕組みになっていた。どの雨樋もそうなっているので、バンコクではこの形式が一般的なのかもしれない。なるほど合理的ではある。なんであれ歩道ががたがたしていなければ別に構わない。少し行くと、左手に大きな郵便局が見えてきたので寄ってみることにする。中央郵便局のようす。石造りの古めかしい硬質な感じの建物で、中は天井が高くガランとしている。局員も客もそれなりにいるのだけど、静かで冷たく気怠い感じがする。嫌いな雰囲気ではない。面白い切手がないか見てみたけれど、とくに興味を惹くものがなかったのでなにも買わずに外に出て、さらに北を目指す。

[photo] チャルン・クルン通りの看板

しばらくすると三叉路にぶつかったので右の道を進む。パドゥン・クルン・カーヤム運河が道に沿って流れている。運河というより都市河川で、少なくとも清流ではない。このあたりになると観光客が来るエリアではないのか土産物屋は姿を消して、代わりに水回りの設備を販売する店が多く建ち並ぶようになる。便器とか。そういう街なのだろう。合羽橋みたいな。ちょうど路線バスが道端の停留所に着いて、たくさんのひとが下車してきたのだけど、きっとこの辺に住んでいるか、あるいはこの街に用事があるかのどちらかだろう。便器を1つください、とか言って。ここは自分がふだんいる場所ではない、ということが強く感じられて旅に出ている実感が沸いてくる。なかなか楽しい。そんな頃合いで中央駅が見えてきた。

[photo] たぶん日本からの中古バス

バンコクの中央駅は日本にはあまりない終端型の長距離ターミナル。世界的に見ると都市における鉄道網は遠近分離しているのが一般的で、ヨーロッパなどでも都市交通は地下鉄やトラム、郊外へは専用のターミナルからと役割が別れている。それに対して東京の場合、上野駅や東京駅、新宿駅あたりが長距離ターミナルなんだけど、山手線などの近距離通勤路線、地下鉄、私鉄が入り乱れて結びついているので明確な役割分担にはなっていない。どちらが便利かというと東京の方が便利なんだけど、隣の芝は青いというか、遠近分離ターミナルというものに憧れがあるので見に来た次第。ちなみに上野駅の末端型ホームから北陸だとか東北方面への寝台列車に駅弁を買って乗り込む際の高揚感と同種といったらわかっていただけるだろうか。なにか起きそうなわくわく感と少し切ない気分が綯い交ぜになったちょっと甘い感覚。

[photo] フアラムポーン駅

正式な駅名はフアラムポーン駅と言う。思った通りのドーム型の古めかしい、けれどとても重厚な駅舎で、思った以上に多くのひとたちが(おそらくは)列車の出発を待っていた。自動券売機のようなものはなく、有人の券売窓口がならび、切符を求めてひとびとが行列をつくっている。掲示は多くがタイ語のみで、まるでわからなかった。観光客が切符を買うのは大変そうだ。切符が無くてもプラットホームまで入れるので、中に入って出発を待つ列車たちを見て歩く。ホームの隅では出発を待つ間の時間を使って、散髪屋が開店していた。わりに繁盛している。タイ国鉄は電化されていないようで、列車はすべてディーゼル動力で動いている。大半は客車を機関車が牽引するタイプ。客車はどれも年季が入っていて日本ではまずお目にかかれない旧式のもの。ドーム形式の終端型ターミナル、ディーゼル機関車、草臥れた客車という重厚長大で長閑な組み合わせがとてもいい。でも毎日の利用者からしてみたら新しくて機能的な設備のほうがいいんだろうな。古いものが消えていくのには理由がある。納得できるかどうかは視点の問題だと思う。

さて、ここから先はとくに予定を決めていない。選択肢としては、元来た道を戻る。あるいは地下鉄でシーロムまで行きBTSに乗り換えてホテルに戻る。などが考えられるがまだ11時で時間がある。近くのチャイナタウンに行くという手もあるけれど、それほどチャイナタウンに興味がない。地図を見ると、駅に沿って道が延びているのでもうしばらく散歩してみることにした。まあ適当に行ってみましょう。

駅を出てしばらくは商店もなく、車道横の歩道をじっと歩く。右手は駅構内でどうやら操車場になっているようで客車などが留置されていたり、よくわからない部品が野積みされていたりしている。駅に勤めているひと向けの駐車場もある。そういうどちらかというと裏側な風景が続く道を行くと鉄道警察の建物にぶつかるので運河を渡り、対岸のクルン・カセム通りをさらに北上する。

[photo] パドゥン・クルン・カーヤム運河

そのうちラーマ1世通りと交差するのでここで右折する。すると道がなにかを跨ぐかのように坂道になっているので、たぶんそうかなあ、と思っていると予想通りこれまで併走していた国鉄線を跨いぐところだった。見渡すと遠くに中央駅が見える。操車場付きなので広い敷地に列車と機関車が広がっていて視界が開けて見晴らしがいい。ここでしか見られない景色が見られ、ここまで歩いてきてよかったと思えたので、この辺がこの散歩の折り返し地点だなと意識する。高速道路をくぐり、いくつも交差点を抜け、ナショナルスタジアムを通り過ぎて、着いたところは初日に来たサイアム地区。はじめて来た街でも日を変えて訪れると見知った街のようになんだか安心する。少し愛着がわいても来る。書店に寄りたかったので、タイ東急、MBKセンター、前にも行ったディスカバリー・センターなどをうろうろしたりしていると時間になったので、BTSに乗って帰ることにする。サパーン・タクシン駅までしばらく電車に揺られる。車内では現地駐在員の奥様らしきふたり連れがローカルな会話をしながら途中で下車していく。ちょっと疲れたかな、という頃合いで電車を降りて、チャルン・クルン通りをホテルまで戻る。ニューロード、サイアム、スリウォン地区をかなりざっくりとだけど一周してきた感じ。歩き通しだったけれど、面白かった。

ホテルロビーで頃合いよく合流できたので、いったん部屋に戻って態勢を整えてからふたたび出掛ける。さすがに疲れたので今度はタクシー(オレンジ)で移動。10分くらいのところにあるブルー・エレファントを訪ねる。ここはベルギー発のタイ料理店で、ヨーロッパ風のタイ料理というのに興味があって来てみた。お店は洋館の一軒家でタイ料理店のようには見えない。内装も洒落ている。そしてこういう洒落ている感じなどを含めて、グルメサイトなんかだと賛否両論のようなのだけど、こういうのもありじゃないかと思う。同じことをやるよりも違うことをやった方が面白い。それに昨夜は伝統的なタイ料理を食べたので、それとは違ったものを食べてみたい気持ちもある。平日のランチ時だったので、ビジネスランチを注文する。値段は忘れてしまったけれど、たしか590バーツ。タイにしては高いけど、ひと口大の前菜も含めて10品ほどがコンパクトにまとめられて供される。見た目にも美しい。春巻き、トムヤムクン、あるいはグリーンカレーといった品目や、香草を効かせたり、または甘酸っぱく仕上げたりする調理法は確かにタイ料理なのだけど、どこかマイルドにアレンジされていて、少なくとも僕はおいしく食べられた。タイ料理好きなひとはもしかしたら物足りないかもしれない。でも日本にあったらもう一度食べに行きたいな。そんなお店でした。ロゴマークのゾウもかわいい。

[photo] ブルー・エレファントのランチ

時間は15時前。日が暮れるまでに行っておきたいお店があるので、目の前にあるスラサック駅からBTSに乗り込む。

続く。

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